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開業・独立 シリーズ:セラピスト開業の教科書 #40

理学療法士を名乗ってサロンを開くなら──看板から「リハビリ」を外した日

2026/10/15 / 更新:2026/10/15

理学療法士を名乗ってサロンを開くなら──看板から「リハビリ」を外した日

この記事で分かること

読了時間:約 8 分

  • ✓ 理学療法士と名乗るなら、看板の「リハビリ」は理学療法の3要素のうち「対象」と「目的」を自分から満たしに行く言葉になる
  • ✓ きっかけは同業者の一言。自分のサイトを全部読み直したら、タイトル・注記・口コミ・症状の札に「リハビリ」「医療レベル」「診る」が残っていた
  • ✓ 2026年10月14日に20ファイル以上を直し、口コミ1枚と症状の札1枚を外した。経歴の事実とお客様の言葉は残した
  • ✓ 名乗っても名乗らなくても、行為の合法性は変わらない。変わるのは「疑われやすさ」と「信頼」だけ
  • ✓ 線は「対象」ではなく「目的」で引く。それでもグレーは残る

2026年10月14日、私はサロンのサイトと名乗りから「リハビリ」という言葉を外しました。店の前の実物の看板にも「リハビリ」と「改善」の文字が残っていて、こちらは作り直しているところです。

きっかけは、Threadsに書いた投稿への、同業者からの一言です。

リ・ハビリテーションなので、自費だろうが保険診療だろうが、対象は障害がある人ではないでしょうか。そうなると、法律違反にあたるのではないでしょうか。

言葉の意味としては、その通りだと思いました。リハビリテーションは、病気やけが、障害のある方を中心にした言葉です。それを理学療法士が看板に掲げると、何が起きるか。この記事は、その日に自分のサイトを全部読み直して、直した記録です。

前回までの記事で、自費開業がなぜ問題視されるかと、「自称リハ」と呼ばれる構造を書きました。今回は、その考え方を自分の看板に当てはめた実務の話です。

看板の言葉が、線の位置を動かす

理学療法士及び作業療法士法の第2条は、理学療法を「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため」に、運動や物理的な手段を加えることと定めています。対象、目的、手段の3つがそろって理学療法です。医師の指示が要るのは、この部分です。

私のサロンでは、相手に障害があるかどうかを判定しません。判定しようとすること自体が診断に近づくからです。線は「目的」で引いています。回復を図るのではなく、痛みの悪化と再発を防ぐこと。

ここに「リハビリ」という言葉を置くと、何が起きるか。リハビリは、障害のある方の回復を意味する言葉です。理学療法士が看板に掲げた瞬間、「対象は障害のある人、目的は回復」と自分から宣言した形になります。3要素のうち、2つを言葉で満たしに行ってしまう。残る手段(運動・徒手)は理学療法と似ているので、読む側には「医師の指示のない理学療法」に見えます。

看板に「リハビリ」があると対象・目的・手段の3つがそろって見える。外すと目的で線を引ける、という比較図
図1:看板の言葉で、線の位置が変わる。中身が回復のための訓練なら、言葉を変えても同じこと

指摘を受けるまで、私はここを「言葉の問題」だと軽く見ていました。実際は、自分の線引きを自分の看板で崩していたのです。

サイトを全部読み直したら、残っていたもの

その日の午後、サロンのサイトを、検索結果に出る部分から口コミまで、全部読み直しました。見つかったのは次のものです。

検索結果に出るタイトルは「痛みと身体機能改善専門 リハビリ整体」でした。画面の本文には出ない場所なので、自分では気づいていませんでした。説明文も「名古屋市守山区のリハビリ整体」。Googleに渡す店舗情報も同じです。

ブログには「守山区で『リハビリ整体』を選ぶなら|理学療法士が提供する医療レベルのケア」という記事がありました。2024年に書いたものです。「医療レベル」は、医療と同じものが受けられると思わせる表示そのもの。本文には「本物のリハビリ整体」「併用で相乗効果を得る方も多数」とありました。

全ページの下の注記は「健康保険が使えない自費のリハビリ・コンディショニングサロンです」。医療機関ではないと断ったつもりの一文に、リハビリが入っていました。

トップページの口コミには、お客様の言葉として「常にリハビリを必要としています」「安心してリハビリを受けられます」がありました。お客様の言葉です。でも、サイトに載せた以上、私の表示として扱われます。

1画面目の症状の札には「リハビリ後に残る痛み」。専門家の紹介には「動きを診る専門家」。よくある質問には「診てもらえますか?」。「診る」は医療の言葉です。

数えると、名乗りとしての「リハビリ」が残っていたファイルは20を超えていました。4年かけて少しずつ書き足した言葉が、そのまま残っていた、ということです。

直したもの、残したもの

その日のうちに直しました。

検索結果に出るタイトルは「名古屋市守山区 理学療法士の整体」に。注記は「理学療法士の自費のコンディショニングサロン(痛みの悪化と再発を防ぐケア)」に。「医療レベル」の記事は題名と本文を書き換え、以前「リハビリ整体」と名乗っていたこと、誤解されやすいので改めたことを、記事の中に書きました。

口コミは1枚、外しました。良い内容でしたが、「ここでリハビリを受けている」と読める以上、今の線と両立しません。症状の札の「リハビリ後に残る痛み」も外しました。対象を自分で書いているからです。「診る」は「見る」と「相談」に。

残したものもあります。「病院に理学療法士として15年勤務」という経歴は事実なので残しました。ただし1画面目の「病院リハビリ15年の経験をもとに」は「病院勤務15年」に言い換えています。理学療法士の名前のすぐ横に、リハビリが並ばないように。お客様の状況を描く言葉、たとえば「病院の治療は終わったけれど、痛みが残っている」も残しています。相手の状態の言葉であって、こちらの目的ではないからです。

理学療法士を名乗るなら自分のサイトで確かめる7か所の一覧。タイトルと説明文、注記、口コミ、症状の札、経歴、医療と効果の言葉、SNSのプロフィール
図2:名乗るなら確かめる7か所。画面に出ない場所と、他人の言葉の場所が盲点になる

最後に、よくある質問に1問足しました。「病院のリハビリと同じことをしてもらえますか?」。答えは「いいえ」です。当サロンで行うのは予防・コンディショニング目的の施術で、医療のリハビリ(障害の回復を目指す訓練)は提供していない。医療が必要と思われる時は、施術を行わず受診をおすすめする。

これは、人を判定する文ではなく、業務の範囲を宣言する文です。「障害のない方が対象です」と書けば、来た人を判定したことになる。「何を提供し、何を提供しないか」なら、自分で決められます。

名乗らない、という道はどうか

ここで一度、逆の道も考えました。理学療法士と名乗らず、ただの整体師として開業すれば、通知の範囲も、3要素の話も関係なくなるのではないか。

法律の面では、半分その通りです。民間療法が許される条件は、1960年の最高裁判決で「人の健康に害を及ぼすおそれがあるかどうか」です。相手に痛みがあるかどうかは条件に入っていません。名乗らなければ、対象の縛りは消えます。

でも、行為の合法性は変わりません。やっていることが診療の補助に当たるなら、名乗らなくても無資格で診療の補助をした形になり、違反の筋はむしろ太くなります。事故が起きた時、理学療法士であることを隠していても、責任は資格者として問われます。協会の急告が「法的責任が免除されることはない」と書いているのは、この意味です。

名乗らない道で得られるのは、疑われにくさだけ。失うのは、信頼の材料と、自分の発信の土台です。私には合いませんでした。

正直な注記

厚生労働省の2013年の通知(平成25年11月27日 医政医発1127第3号)が、理学療法士の名称を使ってよい業務の例として挙げているのは、介護予防事業などで「身体に障害のない者」に転倒防止の指導をするような業務です。私のサロンに来るのは、痛みのある方です。WHOの分類では、痛みも機能障害に入ります。つまり、私の業務は通知の例にそのまま重なってはいません。

成り立つ根拠は、例ではなく条件のほうです。名称を使ってよい条件は「診療の補助に該当しない業務」で、「障害のない者」は例示です。医療機関の外で、医師の管理のない民間療法として行う施術は、診療の補助の形になりません。整体院が痛みのある方を施術できるのと、同じ土台です。

ただし、行政や裁判所が同じ読み方をする保証はありません。グレーのまま置かれている。だから、できることは「グレーの中で、自分がどこに線を引いているかを明文化しておく」までです。看板から言葉を外したのは、その線を、自分の看板で崩さないためでした。

100%白くする道があるとすれば、痛みを扱わない事業にすることです。中高年の体力づくりや転倒予防なら、通知の例にそのまま入ります。私は数年後、広い場所に移る時に、その形に近づけたいと考えています。今はまだ、痛みのある方を迎える整体です。

これから名乗って開業する人へ

指摘した相手の名前は出しません。でも、感謝しています。4年間、自分では気づけなかった矛盾を、一言で見せてくれました。

名乗って開業するなら、開業の前に、看板の言葉を全部書き出してみてください。検索結果に出るタイトル、全ページの下の注記、口コミ、症状の札、経歴の書き方、「診る」「治す」「改善」の言葉、SNSのプロフィール。この7か所に「リハビリ」が1つでもあれば、それは理学療法の対象と目的を、自分で満たしに行っている言葉です。

外すのは、法律に怯えるためではありません。自分で引いた線を、自分の言葉で守るためです。

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よくある質問

Q. 「リハビリ」という言葉を使うだけで違法になるのですか?

A. なりません。リハビリという言葉の使い方を限る法律はなく、法律で対象が決まっているのは「理学療法」です。問題は、理学療法士と名乗ったうえで「リハビリ」を掲げると、障害のある方の回復が目的だと自分から宣言した形になり、医師の指示のない理学療法に見えることです。違反かどうかは言葉ではなく中身で決まります。

Q. 理学療法士と名乗らなければ、自由にリハビリと言えますか?

A. 法律上の縛りは軽くなりますが、行為が診療の補助に当たるなら、名乗らなくても無資格で診療の補助をした形になります。事故が起きた時の責任も、隠していても資格者として問われます。名乗らない道で得られるのは、疑われにくさだけです。

Q. 経歴の「病院リハビリ15年」も消すべきですか?

A. 私は、1画面目と専門家の紹介では「病院勤務15年」に言い換えました。職歴は事実なので消す必要はありませんが、理学療法士の名前のすぐ横に「リハビリ」が並ぶ場所は避けています。サービスの名前として使わないことが線です。