理学療法士と名乗っていいのか──名称独占と、資格を名乗る重さ
2026/10/15
この記事で分かること
読了時間:約 5 分
- ✓ 理学療法士は名称独占で、業務独占ではない。体を整える・運動を指導する行為そのものは独占していない
- ✓ 有資格者が名乗ること自体は問題ない。厚労省の通知にも「名称を使用することは何ら問題ない」とある
- ✓ 問題は名乗り方。資格を出すなら「医療機関ではありません・自費です」の枠もセットで出す
- ✓ 資格は能力の保証ではない。逃げ道を塞いで、責任を引き受けるためのもの
自費で開業するなら、「理学療法士」と名乗っていいのか。名乗らないほうが安全なのではないか。
調べたうえで書きます。有資格者が名乗ること自体には問題ありません。問題になるのは名乗り方です。
この記事は3本組の2本目です。1本目のなぜ「問題視」されるのかで、線の場所(診療の補助かどうか・目的で線を引く)を書きました。
名称独占であって、業務独占ではない
理学療法士は名称独占の資格です。資格のない人が「理学療法士」と名乗ることはできません。でも、体に触れて動きを整えたり、運動を指導したりする行為そのものを、理学療法士だけが独占しているわけではありません。
だから整体師やトレーナーが体を見ることは違法ではないし、理学療法士が自費で開業する場合も「理学療法士の知識を活かした民間療法」という位置づけになります。
はっきり言うと、私が自宅でやっている整体は、法律上の位置づけでは町のリラクゼーションサロンと何も変わりません。国家資格があるから一段上のことができる、ということはない。看板に「理学療法士」と書いてあっても、提供しているサービスの枠は同じです。
理学療法士が、
民間療法を提供している。
それだけです。
それ以上に見せようとするから、話がおかしくなる。
名乗ること自体は、法律も国も認めている
理学療法士及び作業療法士法の第17条は、こう定めています。
理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない
禁止されているのは「理学療法士でない者」です。名称独占は、資格を持っていない人の使用を禁じる制度で、持っている人の使用を制限するものではありません。
厚生労働省の2013年の通知にも、こう書かれています。
理学療法以外の業務を行うときであっても、「理学療法士」という名称を使用することは何ら問題ない
——厚生労働省「理学療法士の名称の使用等について」(平成25年11月27日)
私の解釈ではなく、国の通知の文です。だから私は、チラシにもホームページにも「理学療法士(国家資格)」と書いています。
名乗るなら、枠もセットで出す
資格名を出すこと自体は合法でも、出し方で「医療行為が受けられる」「病院と同じことをしてもらえる」と思わせれば、それは誤認です。
私のチラシには「理学療法士(国家資格)・修士(保健学)」と書き、同じ紙面に必ず「当サロンは医療機関ではなく、健康保険適用外(自費)です」という注記を添えています。
資格を出すなら、同時に枠も出す。片方だけ出すから、誤認が生まれます。
「名乗らなければいい」という発想は、少し逆を向いていると思います。ぼかせば指摘はされにくくなる。でもそれは線を引いたことにはなりません。お客様から見れば、あなたが何者で、何ができて、何ができないのかが、かえって分からなくなります。
名乗り方で私が実際に直したことは、看板から「リハビリ」を外した日に書きました。「理学療法士」の横に「リハビリ」を置くと、理学療法の対象と目的を自分の言葉で満たしに行ってしまう、という話です。
なお、協会は2026年7月に「理学療法士の名称の適正な使用について」を公表し、「Physio(フィジオ)」「〇〇理学療法士」といった名称も、使い方によっては名称独占の対象になり得るという見解を示しました。想定されているのは有資格者以外の使用ですが、業界がこの問題に神経を使っていることは知っておいたほうがいいと思います。
資格は、上に立つためのものではない
では、資格は何のためにあるのか。
書きながら考えが変わりました。最初は「危険を見分けて医療につなげられることが違う」と書いていた。でも、長くやっている整体師さんは異変に気づきますし、資格があっても見落とす人はいます。資格は、能力の保証ではありません。
私は、逃げ道が塞がれることだと思っています。理学療法士だと名乗った以上、「知らなかった」では済まない。見落とした時に「素人なので」とは言えない。
資格は、上に立つためのものではなく、
責任を引き受けるためのもの。
名乗ることの重さには続きがあります。もし私が店で事故を起こせば、ニュースは「整体師が」とは書きません。「理学療法士の男が」と書きます。開業して理学療法士を名乗るということは、全国の理学療法士が積み上げてきた信頼から、毎日少しずつ借りて商売をするということです。
名乗った以上、逃げられない。それは自分の話であると同時に、同じ名前で働く人たち全員に対する責任の話でもあります。
続きの1本
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よくある質問
Q. 協会は「理学療法士と名乗らず整体をしてほしい」という見解なのですか?
A. いいえ。急告が問題視しているのは「理学療法を実施する行為を宣伝したホームページ」、つまり名乗りではなく理学療法を提供すると掲げることです。名称独占(PT法17条)は資格のない人が名乗ることを禁じる規定で、有資格者が事実として名乗ること自体に問題はありません。
Q. 名乗らずに整体師として開業したほうが安全ですか?
A. 疑われにくくはなりますが、行為の合法性は変わりません。やっていることが診療の補助に当たるなら、名乗らなくても問題になります。事故が起きた時の責任も、資格者として問われます。隠すより、資格と枠の両方を示すほうが、自分もお客様も守れます。