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開業・独立 シリーズ:セラピスト開業の教科書 #42

自費サロンの線引き、私の実務──初回の5つの説明と、使わない言葉

2026/10/15

自費サロンの線引き、私の実務──初回の5つの説明と、使わない言葉

この記事で分かること

読了時間:約 5 分

  • ✓ 私の店で提供しているのは、あくまでも民間療法。それを最初に言う
  • ✓ 初回に5点を説明し、同意をいただいてから施術に入る
  • ✓ 「原因は◯◯です」と言い切らない。断定するかわりに、動きの変化を体験してもらう
  • ✓ チラシで「根本」「特定」「原因を見つける」「原因を特定」の4語を差し戻された
  • ✓ マッサージは業務独占(あはき法)。言葉と中身の両方で線を引く
  • ✓ 強い言葉に手を出す前に、焦らなくていい価格設計をする

線の場所が分かったら、次は自分の運用をそれに合わせるだけです。この記事では、私の店で実際にやっていることを書きます。

この記事は3本組の3本目です。線の場所はなぜ「問題視」されるのか、名乗り方は理学療法士と名乗っていいのかに書きました。

初回に説明して同意を得る5点の一覧
線を引いてから、看板を作る。私の場合はこの5点です

あくまでも民間療法だと、先に言う

私が提供しているのは、あくまでも民間療法です。国家資格を持っていても、そこは変わりません。

ここを曖昧にしたまま始めると、看板の言葉も、お客様への説明も、ホームページの表現も、すべて危うくなります。逆に、ここさえはっきりさせておけば、あとの判断はほとんど自動で決まります。

初回に、5つのことを説明して同意をいただく

病院では、医師の診断を経た方だけを担当していました。自費サロンは違います。診断を受けていない方が、いきなり来られます。

なので初回は必ず「病院に通院していますか」「お薬は飲んでいますか」を確かめ、次の5点を説明して、同意をいただいてから施術に入ります。

  1. 当サロンは医療機関ではないこと
  2. 提供しているのは、あくまでも民間療法であること
  3. 理学療法の提供はできないこと
  4. 状態を見て施術が難しいと判断した場合は、お受けできないこと
  5. 病院の受診をお勧めする場合があること

面倒に見えるかもしれませんが、ここを飛ばすほうがずっと怖い。医療機関の外で最初に人を見る立場になる以上、Red Flag の除外も自分の仕事になります。

「原因は◯◯です」と言い切らない

理学療法士にとって、いちばん引っかかるところだと思います。原因を特定して伝えるのは、診断に近づきます。だから私は「あなたの痛みの原因は◯◯です」とは言いません。

かわりに、疾患名で説明するのをやめて、動きの変化で共有します。

「この動きで症状が出ますね」 「ここをこう変えると、さっきより楽ですね」

お客様自身に確かめてもらう形です。言葉で断定するかわりに、体験してもらう。病院を出てから、いちばん考え方を変えたところです。

広告の言葉も、そこから決まる

折込チラシを印刷会社に入稿したら、審査で差し戻されました。指摘されたのは4語です。

  • 根本
  • 特定
  • 原因を見つける
  • 原因を特定

「原因を『動き』から見つけ」「根本からサポートします」「丁寧な検査で原因を特定」と書いていました。全部書き直して、「動きなどから状態を確認して」「丁寧な状態確認」にしています。

原因を断定しないと決めたのに、チラシには断定が残っていた。運用と広告が食い違っていただけです。「治る」「改善」と書けない理由も、突きつめれば同じところから来ています。

正直に言うと、強い言葉は使いたくなる

強い言葉は効きます。「根本改善」「痛みの原因を特定します」のほうが、問い合わせは増えます。予約の入らない日が続くと焦りますし、それを使っている同業者が繁盛していれば、自分も、と思う。

私も使っていました。5年目の今年、チラシに書いて入稿し、差し戻されて気づきました。開業したての人だけの話ではありません。

「治る」と言われて来た人は、治ることを期待します。期待どおりにならなければ、裏切られたと感じる。返金を求められることも、口コミに書かれることもあります。

強い言葉は、入口を広げるかわりに、
出口で自分の首を絞めます。

では、強い言葉を使わずにどう集めるのか。私の場合は価格の設計でした。稼働4割で黒字になる値段にしておけば、満員にしなくても生き延びられます(自費の価格、どう決めた?)。生き延びられるなら、焦って強い言葉に手を出す必要がなくなる。

言葉を強くする前に、焦らなくていい設計にする。順番はそっちだと思っています。

もうひとつの線:「マッサージ」は別の資格の領域

実務ではもう1つ、別の法律の線があります。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)です。

理学療法士が名称独占なのに対して、あん摩マッサージ指圧師は業務独占です。資格がなければ、マッサージを業として行うことはできません。理学療法士がマッサージを行えるのは、医師の指示のもとで理学療法として行う場合です(理学療法士法15条2項)。

何が「マッサージ」に当たるかの線は固まっていません。ただ、開業する側にとっては、いちばん現実的なリスクだと思っています。

私が気をつけているのは2点です。1つは言葉。「マッサージ」「指圧」「もみほぐし」は、メニューにもチラシにもホームページにも出しません。もう1つは中身。慰安や疲労回復を目的にした施術ではなく、動きの評価と、それに基づく個別のプログラムという形にしています。

言葉を避けるだけの小手先ではなく、実際にそういう仕事をしているかどうか。問われるのはそこです。

それでも、病院に通いながら来る人がいる

できないことばかり書いてきました。では、なぜこの仕事が成り立つのか。

私の店に来られる方の多くは、病院に行ったあとの人です。画像を撮って「異常なし」と言われた。「年のせいですね」と言われた。それでも痛い。

これは病院が悪いという話ではありません。保険のリハビリは疾患名がないと始められず、期限もあります。制度が守備範囲を決めていて、その中で病院はきちんと仕事をしています。問題は、守備範囲の外にも人がいることです。

私たちは医療の代わりではありません。医療が守備範囲を終えたところ、あるいはまだ入っていないところで、動きの問題に付き合う仕事です。だから、目の前の人が医療の守備範囲にいると分かった時は、すぐにそちらへ戻す。線を引くというのは、断ることではなく、その人がいるべき場所を見極めることでもあります。

📌 私は弁護士ではありません。ご自身のメニューや表現が問題ないかどうかは、専門家や行政の窓口(保健所)にご確認ください。

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よくある質問

Q. では、自費サロンで提供しているものは何なのですか?

A. 理学療法ではない何か。私の言葉で言えば民間療法、営業の言葉で言えばコンディショニングです。だから「理学療法を提供します」とは書かず、資格は経歴の事実として示し、医療でないことを先に説明してから施術に入ります。

Q. 原因を言わないと、お客様は不安になりませんか?

A. 疾患名で説明するかわりに、「この動きで症状が出ますね」「ここをこう変えると、さっきより楽ですね」と、動きの変化を一緒に確かめます。言葉で断定するより、体験してもらうほうが伝わります。