開業の広告、結局どの法律を見ればいい?——医療広告ガイドライン・あはき法・PT法の役割分担
2026/8/5
この記事で分かること
読了時間:約 3 分
- ✓ 正本は景品表示法。医療広告ガイドラインは適用外(対象は病院・診療所)で、あはき法の広告規制も施術所でない整体院には適用されない
- ✓ ただしあはき法は「マッサージ」の一語、PT・OT法は「理学療法を提供します」と書かない、という一点ずつで効いてくる
- ✓ 医療広告ガイドラインは規範ではなく参考書。「病院にすら許されない表現を、無資格の店が使っていい理屈はない」という安全側の物差しになる
読者から必ず出る質問に、短く答える。
「広告の言葉って、何を参考にすればいいんですか?医療広告ガイドライン?あはき法?理学療法士及び作業療法士法?」
私もこの1週間で、協会の急告、厚労省の通知、PT法、あはき法、昭和35年の最高裁判決まで原文にあたった。結論から言うと、名前が挙がりがちなその3つは、どれも正本ではない。正本は景品表示法だ。ただし3つには、それぞれ一点ずつ役割がある。地図にするとこうなる。
役割分担の地図
| 法律・ガイドライン | 整体院・サロンに適用されるか | 効いてくる一点 |
|---|---|---|
| 景品表示法 | 適用される(主戦場) | 効果の断定・改善率・No.1・体験談・ステマ。全媒体共通 |
| 医師法 | 距離の問題として常にある | 「診断」「治療」「原因を特定」など医行為を思わせる言葉 |
| PT・OT法 | 広告規制は存在しない | 名乗りは問題ない。ただし「理学療法を提供します」とは書かない |
| あはき法 | 施術所ではないので広告規制は適用外 | 「マッサージ」の一語を使わない(業務独占) |
| 医療広告ガイドライン | 適用外(対象は病院・診療所) | 規範ではなく、最良の参考書 |
| 柔道整復師法 | 適用外 | 接骨院・整骨院のみの話 |
理学療法士・作業療法士が無資格枠で開く整体院・サロンは、医療の広告規制の世界の外にいる。だから医療広告ガイドラインもあはき法の広告制限も、直接は来ない。来ないぶん、審査も監督もなく、一般の商売と同じ景品表示法の土俵にひとりで立つことになる。
3つの法律の「一点」だけ覚える
PT・OT法に広告規制はない。この法律が効いてくるのは言葉の選び方だ。理学療法士と名乗ることは、開業しても問題ない(厚労省の通知が明言している)。ただし「理学療法を提供します」と書くことは避ける。理学療法はPT法2条で定義された言葉で、診療の補助の枠に入るからだ。名乗りと提供表明を分ける——詳しくは問題視の記事に書いた。
あはき法は、広告規制としては無関係だが、「マッサージ」という言葉の一点で効いてくる。マッサージはあん摩マッサージ指圧師の業務独占なので、メニューにもキャッチコピーにも使わない。「ほぐし」「手技」など、言葉と中身の両方で線を引く。
医師法は、特定の媒体ではなく全部の言葉にかかる背景の重力だと思えばいい。診断・治療・治す・原因の特定——医行為を思わせる言葉に近づくほど危ない。これは9つの型の記事で書いたとおりだ。
医療広告ガイドラインの正しい使い方
適用されないのに、なぜ参考書として最良なのか。
広告で問題になりやすい論点——ビフォーアフター写真、体験談の扱い、他との比較、費用の見せ方——を、国の文書として一番丁寧に整理しているのがこのガイドラインだからだ。そして判断に迷ったときの物差しとしても使える。「この表現は、病院なら許されるか?」——病院にすら許されない表現を、審査も監督もない無資格の店が使っていい理屈は、どこにもない。
実務のチェック順(この順で読み直す)
- 景品表示法の目:この数字・効果表現は、根拠を出せと言われて出せるか
- 医師法の目:診断・治療・治すことを約束していないか
- PT・OT法の目:名乗りはいい。「理学療法をします」と書いていないか
- あはき法の目:「マッサージ」の一語が入っていないか
- 迷ったら医療広告ガイドライン:「病院なら許されるか?」で判定
これで、チラシもホームページも同じ基準で読み直せる。媒体ごとの門番の違いは前回の記事に書いた。
自分の文面をこの順でチェックするのが不安な人は、LINEで相談を受けている。私が原文まで読んだ資料と、自分のチラシが審査で止められた経験を、あなたの文面に当てはめて一緒に見る。
よくある質問
Q. 「リハビリ」という言葉は使っていいのですか?
A. 使えます。「リハビリ」「リハビリテーション」は特定の資格に紐づいた法定用語ではなく一般語です。私も「自費リハビリ・整体」という表現を使っています。一方「理学療法」はPT法2条で定義された言葉なので、店のサービスとして「理学療法を提供します」と書くことは避けています。名乗り(理学療法士です)と提供表明(理学療法をします)を分けるのが線です。
Q. 医療広告ガイドラインが適用されないなら、読む必要はないのでは?
A. 規範としては不要ですが、教材としては最良です。ビフォーアフター写真の扱い、体験談の扱い、他院との比較——広告で問題になりやすい論点が、国の文書として一番丁寧に整理されています。医療機関に禁じられている表現を、審査も監督もない無資格の店が使っていい理屈はない、という安全側の物差しとして読んでください。
Q. 接骨院や鍼灸院を併設・勤務経験がある場合は変わりますか?
A. 施術所(あはき・柔整の資格で開設する院)を開くなら話が別で、あはき法7条・柔道整復師法24条の広告制限が正面から適用されます。広告できる事項が法律で列挙されており、この記事の整理よりずっと厳しい世界です。その場合は所属団体や保健所の案内を正本にしてください。