Physio Kimura Academy
開業・独立 シリーズ:セラピスト開業の教科書 #19

HPに載せていい言葉と、チラシに載せていい言葉は同じか——同じ言葉が片方でだけ止められた話

2026/8/5

HPに載せていい言葉と、チラシに載せていい言葉は同じか——同じ言葉が片方でだけ止められた話

この記事で分かること

読了時間:約 4 分

  • 法律(景品表示法)は媒体を区別しない。HPもチラシも同じ「表示」で、使っていい言葉の法的な線は同じ
  • 違うのは門番。チラシには印刷会社の審査と折込基準があり、HPには審査が存在しない——「自由」なのではなく「止めてくれる人がいない」
  • 実務の結論は「一番厳しい門番を全媒体の基準にする」。お客様はチラシのQRからHPへ媒体を横断するので、途中で約束が変わる言葉は信頼を壊す

前回の記事で、危ない集客文言の9つの型を書いた。今回はその続きで、開業準備中の人から必ず出る質問に答える。

「HPに載せていい言葉と、チラシに載せていい言葉は、同じなんですか?」

私にはこの質問に、実体験で答える資格がある。今年、私のホームページに5年間載っていて誰にも何も言われなかった種類の言葉が、チラシでは印刷会社の審査で止められたからだ。同じ店の、同じ施術を説明する言葉なのに、片方は素通りで、片方は止まる。この差の正体を分解する。

法律は、媒体を区別しない

先に根拠の話をする。広告表現の主戦場である景品表示法は、「表示」を規制する法律だ。そしてこの「表示」には、チラシも、ホームページも、看板も、SNSの投稿も、口頭のセールストークまで含まれる。

つまり法律上は、HPに載せていい言葉とチラシに載せていい言葉は同じだ。「Webはゆるくて、紙は厳しい」という法律は存在しない。医師法との距離の問題(診断・治療を思わせる言葉)も、媒体を問わず同じだ。

では、なぜ私のチラシだけが止められたのか。

違うのは法律ではなく、門番だ

答えは、媒体ごとに「世に出る前にチェックする人」が違うからだ。門番の地図を描くと、こうなる。

媒体門番止まるタイミング
チラシ(印刷)印刷会社の審査入稿時
新聞折込折込会社・新聞販売店の基準折込申込時
Google広告広告ポリシーの審査出稿時
ポスティングなし止まらない
ホームページなし止まらない
SNS通報ベースの事後対応ほぼ止まらない

私のチラシを止めたのは、法律の執行者ではなく印刷会社の審査だった。印刷会社は自社が違法広告の片棒を担がないよう、法律より少し内側に自主基準の線を引いている。新聞折込も同じで、新聞の信頼を借りる媒体だから基準がある。

一方、ホームページには門番がいない。公開ボタンを押せば、どんな言葉でも世に出る。

「審査がない」は「自由」ではなく「守られていない」

ここで多くの人が逆に理解する。審査がないホームページのほうが自由に書ける、と。

実際は逆だ。チラシの審査は、あなたを止める壁であると同時に、危ない言葉が世に出る前に無料で教えてくれる最後の防波堤でもある。私は入稿で止められたとき、正直に言えば面倒だと思った。でも審査がなかったら、あの言葉は数千枚刷られて、回収できない形で守山区の郵便受けに配られていた。

ホームページにはこの防波堤がない。危ない言葉は誰にも止められないまま公開され、静かに置かれ続け、ある日、通報や競合の指摘をきっかけに行政と直接向き合うことになる。紙と違って「刷り直し」はできるが、行政対応に修正は間に合わない。過去の表示も対象になるからだ。

つまりこう言い換えられる。チラシは審査で止まるから安全側に倒れやすく、ホームページは止まらないから一番危ない媒体になりやすい。私のホームページに危うい言葉が5年間残っていたのは、まさにこの構造のせいだ。

実務の結論:一番厳しい門番を、全媒体の基準にする

では実務ではどうするか。私の結論は単純で、印刷審査という一番厳しい門番を、全部の媒体の基準にすることにした。チラシで書けない言葉は、ホームページにも書かない。

理由は法律だけではない。お客様が媒体を横断するからだ。

私のチラシにはQRコードが付いていて、読んだ人はホームページに着地する。もしチラシで「再発しにくい体へ」と書き、ホームページで「根本改善」と書いていたら、QRを読んだ瞬間に約束が変わる。控えめな言葉に好感を持って来た人ほど、着地先の強い言葉に違和感を持つ。せっかく設計した導線の中で、自分の言葉同士が信頼を削り合うことになる。

媒体で変えていいのは情報の深さだ。チラシは3秒で捨てられる紙だから要点だけ。ホームページは滞在してもらえるから、条件も注意点も個人差も書き添えられる。深さは変える、約束は変えない。これが私の運用ルールだ。

自分でチェックするのが不安な方へ

とはいえ、自分の言葉を自分で審査するのは難しい。私自身、開業5年目で法律の記事を書いていても、チラシの言葉は他人(印刷会社の審査)に止めてもらった。書いた本人には、その言葉が強すぎるかどうかが見えなくなる。

これから開業する理学療法士・作業療法士で、チラシやホームページの言葉に不安がある人は、LINEで相談を受けている。私が実際に止められた言葉と、どう書き換えたかを、あなたの文面に当てはめて一緒に見る。

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よくある質問

Q. ポスティングなら審査がないので、自由に書いていいですか?

A. 審査がないのは「チェックする人がいない」だけで、法律の適用は変わりません。むしろポスティングは印刷会社と新聞折込の二重の門番を通らない分、危ない言葉がそのまま世に出ます。誰にも止められない媒体ほど、自分の基準を厳しくする必要があります。

Q. Google広告で不承認になった表現は、ホームページからも消すべきですか?

A. 広告ポリシーと法律は別物なので、不承認=違法ではありません。ただ、不承認の理由が効果の断定や医療的な誤認にある場合、それは景品表示法や医師法の観点でも危ない言葉であるサインです。私は不承認理由を「無料の法務レビュー」として使い、同じ表現をホームページでも見直すようにしています。

Q. チラシとホームページで、内容を変えるのはありですか?

A. 情報量を変えるのはありです。チラシは紙面が小さいので要点だけ、ホームページでは条件や注意点まで詳しく、という深さの違いは自然です。危ないのは深さではなく約束を変えること。チラシで「再発しにくい体へ」と書き、ホームページで「根本改善」と書けば、QRコードを読んだ瞬間にお客様への約束が変わります。