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開業・独立 シリーズ:セラピスト開業の教科書 #22

自費リハは「自称リハ」なのか──医師会系シンクタンクに名指しされた側から、答える

2026/8/7

自費リハは「自称リハ」なのか──医師会系シンクタンクに名指しされた側から、答える

この記事で分かること

読了時間:約 5 分

  • 2020年、経産省委託で日医総研がまとめた報告書は、民間の「自費リハビリ」を「自称リハ」と呼び、業界ガイドラインの策定を提言した
  • 皮肉なことに、参入を促したのは国だった。2010年の経産省報告書と2013年の日本再興戦略が民間の運動サービスを後押しし、増えた事業者を国の委託調査が「自称」と呼んだ
  • 「自称リハ」という指摘は半分正しい。ただし問題は自費であることではなく、名乗りと中身の距離。先に自分のガイドラインを持つ店に、この提言は怖くない

「自費リハビリは問題だ」という話には、出どころがあります。

2020年6月、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が経済産業省の委託でまとめた調査報告書です。そこに、こう書かれています。

医療機関以外の民間事業者が医療行為ではないサービスを「自費リハビリ」と称して提供している。本稿ではこれらの「自費リハビリ」を「自称リハ」と呼ぶ。

——「令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(公的保険外・医療周辺サービス実態調査)調査報告書」(日本医師会・2020年6月)

自称リハ。自費リハビリ・整体のサロンを5年やっている私は、この三文字に名指しされている側です。

前回までの記事で、協会の急告と、開業権が消えた歴史をたどってきました。今回は医師会の側から来た言葉です。自費リハは「自称リハ」なのか。自費リハビリは問題なのか。名指しされた側として、原文を読んだうえで答えます。

報告書は、実際には何を言っているか

まず、報告書を悪役にしないために、書かれていることを公平に並べます。

報告書は、自費リハ市場がまだ草創期で、市場規模すら公的統計で捕捉されていないことを指摘します。提供者になり得る理学療法士・作業療法士が2025年までに1.6倍に増えるという予測にも触れ、事業者の参入が続くと見ています。

そして、事業者の実態が一様ではないことも、報告書自身が認めています。

医療機関からの紹介で来店するなど、医療と密接に連携しているところもあるが、その対極にあるようなところもある。「自称リハ」について、医療本体との棲み分けや連携のあり方を明確にし、また質の担保と利用者保護の観点から業界ガイドラインを策定することが求められる。

——同報告書より

さらに興味深いことに、この報告書は理学療法士協会の急告——「事故あるときには、他の法的責任が免除されることはありません」——まで引用しています。協会の懸念と医師会の懸念は、同じ資料の上でつながっているわけです。

要約すると、報告書の主張はこうです。医療でないものがリハビリを名乗っている。中身は玉石混交である。だから棲み分けを明確にし、ガイドラインを作るべきだ。

皮肉な経緯:参入を促したのは、国だった

ここで、報告書自身が書いている経緯に触れておく価値があります。

2010年の経済産業省の報告書において、フィットネス事業者のリハビリテーションへの参入が提案された。その後の「日本再興戦略」(2013年)で、医療機関から指示を受けた運動サービス等を創出することとされた。

——同報告書より

つまり、民間事業者を保険外の運動・リハビリ領域に招き入れたのは、国の成長戦略でした。そして10年後、同じ国の委託調査が、増えた事業者を「自称リハ」と呼んでいる。

私はこれを、誰かの裏切りだとは思いません。定義とルールが置き去りのまま、市場だけが先に走った——それだけのことです。ただ、この経緯を知っていると、「自費リハ=悪」という単純な図式では読めなくなるはずです。

で、「自称リハ」なのか

答えます。半分は、その通りだと思います。

リハビリテーションは、もともと医療の言葉です。医師の診断があり、専門職が計画を立て、回復を目指す枠組みの中で使われてきました。保険外のサービスが疾患名をプログラム名に冠し、医療で受けるリハビリと同じものがここで受けられるかのように見せるなら——それは確かに「自称」です。危ない集客文言の記事で書いた「病名×治る」の型と、同じ構造です。

でも、残りの半分には納得していません。

「自称リハ」という言葉は、名乗りの問題と中身の問題を一緒くたにします。報告書自身が認めているとおり、医療と密接に連携する事業者から、その対極まで、実態は玉石混交です。玉と石を同じ三文字で括るのは、雑です。そして「自費であること」自体は、何の問題でもありません。急告も、厚労省の通知も、自費の予防・コンディショニング領域そのものは否定していないことは、これまでの記事で一次資料ごと確認してきました。

問題は、自費であることではなく、
名乗りと中身の距離です。

名乗りが中身より大きい店は、自費でも保険内でも信頼を削ります。中身が名乗りに追いついている店は、どちらの制度の中でも信頼を積みます。「自称」かどうかを分けるのは、業態ではなく、この距離だと私は考えています。

名指しされた側の、実務の答え

では、私の店はどうしているか。ガイドラインを待たずに、自分の店のガイドラインを先に作る——これが実務の答えです。

具体的には、これまでの記事で書いてきたことのすべてです。「医療機関ではありません・健康保険適用外です」を名乗りとセットで必ず出す。疾患名をプログラム名に冠さない。原因を断定しない。初回に説明して同意を得てから施術する。医療が必要だと判断したら、施術せずに受診をすすめる。

だから、業界ガイドラインの策定という提言に対する私の立場は、反対ではありません。歓迎です。

線引きを先に自分で引いている店にとって、ガイドラインは怖いものではなく、玉石の「石」と区別してもらえる基準になります。困るのは、名乗りと中身の距離が大きい店だけです。もし本当にガイドラインができる日が来たら、この記事群で書いてきた線引きは、そのまま答案用紙になると思っています。

正直な注記

この記事の引用は、すべて報告書の原文からです(経済産業省委託・日本医師会実施・2020年6月・全140ページ)。「自称リハ」は報告書が定義した用語であり、私の要約ではありません。また、報告書から6年たった現在、業界統一のガイドラインが存在するかどうかは、私の知る限りではまだ策定されていない、という認識に基づいて書いています。違う事実をご存知の方は教えてください。記事を直します。

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よくある質問

Q. 「自費リハビリ」と名乗ること自体が違法なのですか?

A. 違法ではありません。「リハビリ」は法律上の独占用語ではなく、一般に広く使われる言葉です。問題になるのは名乗りではなく出し方で、疾患名を冠したり医療機関と誤認させる見せ方をすれば、景品表示法や医師法との距離が近づきます。私は「リハビリコンディショニング」という呼称に「医療機関ではありません・自費です」の枠を必ず併記しています。

Q. 提言された業界ガイドラインは、もうできたのですか?

A. 私の知る限り、保険外リハビリ業界全体を束ねる統一ガイドラインは、報告書から6年たった現在もまだ存在しません。だからこそ、それを待たずに自分の店の基準を先に作って公開しておくことが、いちばんの自衛になると考えています。

Q. 報告書はどこで読めますか?

A. 「令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(公的保険外・医療周辺サービス実態調査)調査報告書」という名称で、経済産業省と日医総研のサイトで全文が公開されています。自費リハビリに関する章だけでも、開業を考える人は一度読んでおく価値があります。