新人PTのための「フィジカル評価」の基本 — 何を見て、どこを触る?
2026/6/9
この記事で分かること
読了時間:約 6 分
- ✓ 評価は「見る → 触る → 動かす」の3ステップでなぞる
- ✓ 触診は強さでなく左右差。問診で立てた仮説の"答え合わせ"
- ✓ そのまま使えるチェックリスト付き
「触っていいのか分からない」あなたへ
問診で話を聞いたあと、いざ体に触れる段になって、手が止まる——。
「どこを触ればいいんだろう」「強く押していいのかな」「そもそも何を確かめればいいんだ」。新人の頃、私は触診がいちばん怖かったです。なんとなく触って、なんとなく「硬いですね」と言って終わる。それでは、評価になっていませんでした。
でも大丈夫。フィジカル評価にも順番があります。「見る → 触る → 動かす」 の3ステップ。この順でなぞれば、初日からちゃんと評価できます。
これは問診の型の次のステップです。問診で立てた「こうかな?」という仮説を、体で確かめるのがフィジカル評価です。
大前提:評価は「仮説の答え合わせ」
いちばん大事な考え方を先に言います。フィジカル評価は、やみくもに触ることではありません。 問診で立てた仮説を確かめる作業です。
たとえば「前かがみで痛い」と聞いたら、「では前かがみに関わる組織はどこか?」と当たりをつけてから触れる。目的を持って触ると、同じ触診でも得られる情報がまるで変わります(→評価の順番、4ステップ)。
ステップ1:見る(視診・観察)
触る前に、まず目で見ます。新人ほど、ここを飛ばして触りにいきがちです。
- 姿勢・アライメント:左右の高さ、体の傾き、反り・丸まり
- 腫れ・赤み・皮膚の色:炎症のサインがないか
- 左右差:筋肉のボリューム、関節の腫れ
- 動きの質:立つ・座る・歩くといった日常動作で、どこがぎこちないか
ポイントは、患者さんが部屋に入ってきた瞬間から、もう観察は始まっているということ。「自然な動き」にこそヒントがあります。
ステップ2:触る(触診)
ここが新人の不安のピークですね。触診のコツは、たった3つです。
- 左右を比べる:触診は「強さ」ではなく「左右差」を見るもの。健側→患側の順で、同じ力で触れて比べます
- やさしく、浅いところから:いきなり強く押さない。皮膚 → 浅い筋 → 深い組織、と層を意識して深めていく
- 患者さんの表情を見る:手元ではなく顔を見る。痛みの本当の場所は、言葉より表情に出ます
何を確かめるかは、この4つを覚えておけば十分です。
【触診で確かめる4つ】
① 圧痛 … 押して痛むか(どこが・どのくらい)
② 熱感 … 左右で温かさが違うか(炎症の手がかり)
③ 緊張 … 筋肉が休めず張っていないか
④ コンパラブルサイン … 治療の前後で比べる「痛む一点」
特に④のコンパラブルサイン(治療前後で比べるための、はっきり痛む動き・場所)を見つけておくと、あとで「良くなった」を患者さんに示せます(→説明の仕方)。
ステップ3:動かす(運動評価)
最後に、関節や体を動かして確かめます。順番は 「自分で → こちらが」 です。
- 自動運動(自分で動かす):患者さん自身に動いてもらう。どこまで・どの動きで痛むか
- 他動運動(こちらが動かす):力を抜いてもらい、こちらが動かす。動く範囲(可動域)と、終わりの感触
- どの方向で痛む・楽になるか:前かがみ/反らす/ひねる。これが治療方針に直結します(→方向性で分ける)
自動で痛いのに他動で痛くない、など**「ズレ」が出たときが、いちばんの手がかり**です。
やってはいけない評価・3つ
- いきなり痛い所を強く押す:患者さんは身構え、本当の所見が取れません。必ず健側・浅いところから
- 左右を比べない:「硬い」と感じても、その人の元々かもしれません。比較してはじめて意味を持ちます
- 感覚だけで記録する:「なんとなく硬い」では次回比べられません。「右の○○に圧痛、左にはなし」と、場所と左右を言葉にします(→振り返りの書き方)
そのまま使えるチェックリスト(コピペOK)
【見る】姿勢・左右差/腫れ・赤み/日常動作のぎこちなさ
【触る】圧痛(場所)/熱感(左右差)/筋の張り/コンパラブルサイン
※健側→患側・浅→深・顔を見る
【動かす】自動運動(どこで痛む)/他動運動(可動域・終わりの感触)/どの方向で痛む・楽
まとめ
フィジカル評価は、見る → 触る → 動かす。そして根っこにあるのは「問診の仮説を確かめる」という目的意識です。
触診は強く押す技術ではなく、左右を比べて違いに気づく技術。最初はうまく感じ取れなくて当然です。健側と患側を比べる癖をつけるだけで、あなたの手は少しずつ「分かる手」に育っていきます。
評価で見つけたコンパラブルサインは、治療後に「良くなった」を示す宝物になります。ぜひ、ひとつ見つけることから始めてみてください。
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