患者さんへの「説明の仕方」— 「なんとなく良くなった」を、伝わる言葉に
2026/6/9
この記事で分かること
読了時間:約 5 分
- ✓ 説明はサービスでなく治療の一部。納得が、行動と効果を変える
- ✓ 「今の状態→なぜ→これから」の3ステップでなぞる
- ✓ 専門用語の言い換え辞書つき。うまく説明できる=推論が言葉になった証拠
「なんとなく良くなったけど、うまく説明できない」あなたへ
施術のあと、患者さんに「なんで良くなったんですか?」と聞かれて、言葉に詰まったことはありませんか。
手応えはある。でも、いざ説明しようとすると「えっと、筋肉がほぐれて…」くらいしか出てこない——。新人の頃の私が、まさにそうでした。
でも、これは説明が下手なのではありません。「なぜ良くなったか」が、自分の中でまだ言葉になっていないだけなんです。逆に言えば、患者さんに説明できるようになると、あなたの臨床推論そのものが整理されます。説明は、患者さんのためであると同時に、あなた自身の成長のためでもあります。
このアカデミーの軸は「臨床の”なぜ”を言語化する力」です(→アカデミーの歩き方)。患者さんへの説明は、その力を毎日のように鍛えられる、いちばん身近な練習場です。
なぜ「説明」が治療の一部なのか
説明は、おまけのサービスではありません。説明そのものが、効果を左右します。 理由は3つあります。
- 納得すると、行動が変わる:なぜこの運動をするのか分かれば、患者さんは自宅でも続けてくれます
- 安心すると、痛みがやわらぐ:「この痛みは危険ではない」と理解できるだけで、不安からくる痛みの増幅が減ります(→痛みのメカニズム)
- 信頼が生まれる:分かる言葉で説明してくれる人を、患者さんは信頼します
つまり、うまい説明は「気くばり」ではなく「治療」なのです。
説明の型 ——「今 → なぜ → これから」の3ステップ
問診に型があるように(→問診の型)、説明にも型があります。次の3つを、この順番でなぞるだけです。
① 今、何が起きているか(状態)
まず、体に今どんなことが起きているかを、やさしい言葉で伝えます。
「ずっと同じ姿勢が続いて、腰まわりの筋肉がうまく動けなくなっていました」
ここでのコツは、犯人を1つに決めつけないこと。「ヘルニアのせい」と言い切ると、患者さんはその言葉にとらわれてしまいます。
② なぜ、そうなった/良くなったのか(理由)
次に、原因と、施術で何をしたかをつなげて説明します。ここがいちばん大事です。
「動きにくくなっていた部分をゆるめて、痛みの出にくい動かし方を練習しました。だから、さっきより楽に動かせるようになっています」
うまく言葉が出ないときは、評価の前後で比べた「変化」を根拠にすると説明しやすくなります。「さっきは○○で痛かったのが、今は楽になっていますよね」——この**ビフォーアフターの確認(コンパラブルサイン)**が、いちばん説得力のある説明です。
③ これから、何をするか(見通し)
最後に、これからどうするか・家で何をしてほしいかを伝えます。
「この動きを1日3回やってみてください。痛みが10のうち3くらいまでなら大丈夫です。次回、変化を一緒に確認しましょう」
見通しがあると、患者さんは前向きになれます。「自分でも良くできる」という感覚を持ってもらうのがゴールです。
専門用語の「言い換え辞書」(コピペOK)
新人がやりがちなのが、覚えたての専門用語をそのまま使ってしまうこと。患者さんには伝わりません。よく使う言葉を、患者さんの言葉に翻訳しておきましょう。
疼痛閾値の低下 → 痛みに敏感になっている状態
可動域制限 → 動かせる範囲が狭くなっている
筋緊張の亢進 → 筋肉が休めず、ずっと力が入っている
不良姿勢 → 体に負担のかかりやすい姿勢
中枢性感作 → 体が痛みを覚えてしまい、過敏になっている状態
コンパラブルサイン → 良くなったかを確かめるための、痛む動き
セルフエクササイズ → おうちでやる体操
迷ったら、**「自分の家族に話すなら、どう言うか」**を考えてみてください。それがいちばん伝わる言葉です。
やってはいけない説明・3つ
- 断定しすぎる:「これで治ります」と言い切らない。体の回復には個人差があります。「楽になっていく方が多いですよ」と、希望は持たせつつ正直に
- 不安をあおる:「骨が変形してますね」だけ言って終わると、患者さんは怖くなって動けなくなります。必ず「だから、こうしていきましょう」とセットで
- 専門用語で煙に巻く:難しい言葉を並べると賢そうに見えますが、伝わらなければ意味がありません。易しく言えること=深く理解していることです
まとめ
患者さんへの説明は、①今の状態 → ②なぜ → ③これから、の3ステップ。専門用語は、家族に話すつもりで翻訳する。
そして何より——うまく説明できないときは、あなたの説明力ではなく、推論がまだ言葉になっていないサインです。 それに気づけたら、もう一歩前に進んでいます。「なんとなく」を「なぜなら」に変えていく。それを毎日の説明の中で練習していきましょう。
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