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開業・独立 シリーズ:セラピスト開業の教科書 #32

無名の1年目が、開業後の集客をどう描くか──6か月で黒字にした実数字

2026/9/19

無名の1年目が、開業後の集客をどう描くか──6か月で黒字にした実数字

この記事で分かること

読了時間:約 6 分

  • 悩みの正体は技術ではなく「無名の自分が、開いた後どうやって認知を広げて黒字まで行くか」。誰もが通る道
  • 先に決めるのは看板。腰痛・膝・自律神経のどれか1本に絞る。若いうちのほうが絞りやすい
  • 私は開業から6か月で黒字。効いたのは新聞折込チラシ1.6万枚を毎週、約2か月。反応率は0.01〜1%
  • 持続化補助金で、75万円の広告費のうち50万円が戻った。実質25万円。交付は開業後の1月後半
  • 初期費用は実際に約70万円かけたが、必要だったのは実質2万円。内装は売上が立ってからでよかった
  • 場所はベッドのある所から。出張・レンタルサロン・整骨院の空き時間の間借りで、固定費を後回しにする

先日、22歳の理学療法士から相談を受けました。就職して1年目。1月に民間資格の試験を受け、そのあと開業したいと言います。

技術は自分で先生に会いに行って磨いている。悩みはそこではありませんでした。

「無名で経験年数も少ない自分が、テナントを借りたあと、どうやって認知を広げて黒字まで持っていくのか。まったく描けない」

これは誰もが通る道です。私も無名でしたし、5年目の今も無名だと思っています。その日に話した内容を、実数字のまま書きます。

先に決めるのは「看板」です

集客の話に入る前に、決めなければいけないことがあります。何の看板を出すかです。

何でも屋は差別化できません。腰痛、膝、自律神経、睡眠。どれか1本に絞ります。その上に「理学療法士」と「地域」を掛け算する。私は名古屋市守山区だけで、それ以上に認知を広げることをしていません。狭めるのも掛け算です。

若いうちのほうが絞りやすい、というのが私の実感です。経験を積むほど、いろいろ直せるようになります。喜んでくれる人も増える。すると「何でもできます」と言いたくなります。看板を1本にするのが、年々むずかしくなるのです。

相談者は「困る前の予防を広めたい。緊急ではないが重要なことに気づいてもらう発信をしたい」と言いました。それは看板の芯になります。ただし、それだけでは人は来ません。「腰痛」のように、今困っている人が探す言葉を看板に置き、予防はその上に乗せる。この順番です。

看板はあとで変わって構いません。私も膝から始めて、需要のあるほうへ動かしてきました。

6か月で黒字。効いたのは折込チラシです

私は開業から6か月で黒字になりました。その6か月はアルバイトをしながらです。

最初に効いたのは新聞折込チラシです。数字はこうです。

項目数字
枚数1.6万枚を毎週日曜、約2か月
配る先毎回同じ世帯
反応率0.01〜1%。「開業しました」のチラシは約1%
制作自分で作った(当時はIllustratorとCanva。今ならAI)
印刷と配布印刷はプリントパック、配布は新聞店に自分で持ち込み

同じ世帯に繰り返し配ったのには理由があります。1回では覚えてもらえません。2回、3回と目に入って「気になる」に変わります。単純接触と呼ばれる効き方です。

今はラクスルのように、印刷から配布まで一括で頼める会社があります。自分で新聞店に運ぶ手間はもう要りません。

一方で、月7万円を払ったホットペッパーは大赤字でした。回収できませんでした。人が来る店もあると聞きますが、私の客層には合いませんでした。

集客の柱が今も折込である理由は、別の記事に書いています。 開業して最初の患者は、どう集めた?──自宅サロンのリアルな集客

補助金で、75万円の広告費が実質25万円になりました

折込を1.6万枚ずつ毎週まけたのは、持続化補助金があったからです。

開業届を出して事業主になると、商工会議所で相談できます。持続化補助金は経費の3分の2、上限50万円。私は広告費に75万円を使い、50万円が戻りました。実質25万円です。

交付が決まったのは、開業した年の1月後半でした。オープン時に一度チラシをまいて、ほとんど来ない期間が続き、その間に申請していました。決定が出た時点で「75万円分を一気にまく」と決めました。そこから新規が1日3〜5人、月に35人ほど来るようになり、その半分がリピートしました。

補助金がなかったら、75万円分をまく発想そのものがなかったと思います。

流れを1枚にすると、こうなります。

開業から黒字までの流れ。①開業チラシを1回(反応率約1%)②予約が来ない期間はUber Eats ③持続化補助金の交付が1月後半・75万円のうち50万円が戻る ④折込1.6万枚を毎週約2か月 ⑤新規が月35人・半分がリピートで黒字(6か月)
開業から黒字までの流れ。数字はすべて私の実績です

補助金の申請の流れは、こちらに書いています。 開業に使える補助金──「持続化補助金」を、私はこう活用した

初期費用は実質2万円。内装は後でよかった

私の初期費用は、実際には約70万円でした。内装をきれいにし、部屋を直しました。

今なら言えます。必要だったのは施術ベッドとタオルの約2万円だけでした。最初のうち、お客様は来ません。内装にお金をかけるのは、売上が立ってからでよかった。これは私の失敗です。

自宅サロン開業、必須だったのは2万円──設備をいきなり揃えない始め方

場所は「ベッドのある所」から始める

テナントを借りると、固定費は安くても月10万円かかります。予約がない月も払います。

だから最初は、固定費を後回しにします。

  • 出張。お客様の自宅や、相手が来てほしい場所へ行く
  • レンタルサロン。施術ベッドのある部屋を時間で借り、場所代込みの値段をつける
  • 間借り。整骨院や整体院の空き時間(昼休みなど)にベッドを借りる

私も自宅サロンの空き時間を、やりたい人に貸しています。お客様が10人、20人ついた状態で店舗を借りれば、初月から赤字になることはありません。

病院で働きながら週2日だけ店舗を借りるのは、家賃がもったいない。やるなら、時間を全部そこに使える状態にしてからです。相談者は「1月の試験を取ったら病院を一度辞めて、チラシと補助金の準備をして、赤字覚悟で開く」と決めました。それで大丈夫だと、私は答えました。

辞めたあとの生活費については、こちらに書いています。 いくら貯めたら、辞めていい?──生活費1年分と、ウーバーイーツの話

コンサルより、横のつながり

整体業をやったことがない人のコンサルは、避けたほうがいい。私は頼みませんでした。

代わりにやったのは、同業の人に施術を受けに行くこと、その店で仲良くなること、コミュニティに入ることです。情報交換ができる相手を持つほうが、長く効きます。

チラシはラブレターです

最後にチラシの中身の話をします。売りや料金を並べても人は来ません。

誰に届けたいかを決めて、その人が読んだときに「これは私のことだ」と思う言葉で書く。ラブレターと同じです。看板を1本に絞る理由も、ここにつながります。相手が決まっていないと、手紙は書けません。

チラシに書いていい言葉と、危ない言葉は別の記事にまとめています。 「根本改善」と書きかけた5年目の私へ──検索10秒で見つかる、危ない集客文言9つの型

開く前にできること

相談者に渡した「次の一歩」は4つです。

  1. 施術ベッドのあるレンタルスペースを、近くで探す。空き状況と料金を確認する
  2. 看板の案を3つ書く。「誰の、どの困りごとを、どう良くするか」を1行で
  3. 商工会議所で、持続化補助金の流れを聞いておく
  4. 同業の横のつながりを作る

相談は無料で、お金は受け取っていません。代わりに受け取ったのは、その人の一次情報と感想と、開業後の続きです。この記事もそこから生まれました。

開業してよかった、と私は思っています。開業する人を増やしたい。それがこの記事を書く理由です。

なぜよかったと言えるのかは、2本の記事に分けて書いています。家族との時間と、疾患がなくても身体を診られること。順に読んでください。 なぜ「自宅」サロンを選んだのか──会社員15年の理学療法士が独立して得たもの なぜ保険リハを飛び出して、自費の道を選んだのか

よくある質問

Q. 経験年数が少ないと、集客で不利ではありませんか?

A. お客様は経験年数で選びません。「私の困りごとに、この人は答えてくれそうか」で選びます。だから看板を1つに絞ることが、経験年数より先に効きます。経験が増えるほど「何でもできます」と言いたくなり、かえって看板が立てにくくなります。若いうちのほうが絞りやすい、というのが私の実感です。

Q. 病院で働きながら、週2日だけ店舗を借りて始めるのはどうですか?

A. おすすめしません。週2日しか使わない店舗に毎月の家賃を払うのは無駄が大きいからです。働きながら始めるなら、出張・レンタルサロン・整骨院の空き時間の間借りで、固定費をゼロに近づけてください。店舗を借りるなら、時間を全部そこに使える状態になってからです。

Q. 開業コンサルに頼んだほうが早いですか?

A. 整体業をやったことがない人のコンサルは避けたほうがいいです。私は頼まず、同業の人に施術を受けに行き、話を聞き、コミュニティに入って横のつながりを作りました。情報交換の相手を持つほうが、長く効きます。