Physio Kimura Academy
施術室の商売論 シリーズ:施術室の商売論 #2

運ぶ仕事は結果に値段がつき、うちの仕事は人に値段がつく

2026/6/20

運ぶ仕事は結果に値段がつき、うちの仕事は人に値段がつく

この記事で分かること

読了時間:約 2 分

  • 一人だと天井があるのは同じ。でも軽貨物は人を増やせば破れる、整体は破れない
  • 違いの正体は「何にお金が払われるか」=結果に値段か、人に値段か
  • 整体は人に値段がつく商売。大きくしにくいが、簡単には真似されない

前回、ハンドメイド作家さんの話を書いた。同じ「自分が商品」の商売でも、安定している場所がまるで反対だった、という話。

施術室には、ほんとうにいろんな商売の人が来る。今日は、軽貨物ドライバーさんの話。

毎日あちこちに荷物を運んでいる方で、座りっぱなしなのに体じゅうが痛い、と笑っていた。運転と荷物の上げ下ろしで、腰と肩がはっきり張っている。施術しながら、やっぱり商売の話になった。

聞いていて、似ているところと、まるで違うところがあって、面白かった。

同じ「天井あり」でも、人を増やして破れるかどうか

似ているのは、一人でやっていると天井がある、というところ。

ドライバーさんも、一日に運べる件数は決まっている。こちらも、一日に施術できる人数は決まっている。自分が動ける時間しか売れない。体がひとつしかないのは、お互い同じだ。

でも、その先が、はっきり違った。

ドライバーさんは、こう言った。ドライバーを増やしてチームにすれば、運べる量がそのまま増えていく、と。仕事の中身がはっきりしているから、人に任せやすいらしい。任せた分だけ、ちゃんと売上が伸びる。

整体は、これがうまくいかない。

施術を誰かに任せても、「あの先生に診てほしい」で来てくださっている方には、同じようには届かない。任せた瞬間に、お客さんが来てくれた理由そのものが、すこし抜けてしまう。

同じ「一人だと天井がある」仕事でも、人を増やして破れるか、破れないかが、はっきり分かれていた。

結果に値段がつくか、人に値段がつくか

なぜ違うんだろう、と考えていて、たぶん「お客さんが何にお金を払っているか」なんだと思った。

軽貨物は、荷物が無事に届く——その結果にお金が払われている。時間どおり、ていねいに、ちゃんと届く。そこに信頼がある。だから人に任せられるし、任せても、その信頼は受け継げる。

整体は、たぶん「誰がやるか」にお金が払われている。同じ手技でも、この人に診てほしい、という気持ちがある。だから任せると、いちばん大事なところが、するりと抜けてしまう。

運ぶ仕事は、結果に値段がつく。 うちの仕事は、人に値段がつく。

同じ「体を使う商売」でも、お金の払われ方が、まるで違っていた。

大きくする商売と、続ける商売

どっちが良いという話ではない。

結果に値段がつく商売は、人を増やして、大きくできる。強い。 人に値段がつく商売は、大きくはしにくい。けれど、簡単には真似されない。

うちは、増やして大きくするより、来てくださる一人ひとりと、長く続けることに向いている。そういう商売なんだな、と、運ぶ仕事の話を聞きながら、逆に自分の輪郭が見えた気がした。

——ただ、世の中の商売は、こんなにきれいに二つに分かれるものでもないらしい。

このあと施術室に来てくれた、ある職人さんの話で、その「ちょうど真ん中」を知ることになる。それは、また次に。