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開業・独立 シリーズ:セラピスト開業の教科書 #36

自宅サロン5年目の実数──月の来院59回・客単価7,700円・利益率84%の中身

2026/10/9

自宅サロン5年目の実数──月の来院59回・客単価7,700円・利益率84%の中身

この記事で分かること

読了時間:約 5 分

  • ✓ 5年目の月次:来院59回・来院人数31人・客単価7,700円・売上46万円。年にすると売上608万円
  • ✓ 固定費は月8万円(社会保険3.6万・サブスク・通信・光熱の按分)。家賃ゼロ・人件費ゼロ・広告ゼロで、利益率は84%
  • ✓ 損益分岐点は月11回の施術。1週目で超える。これが自宅開業の本当の強さ
  • ✓ ただし1年前と比べると来院は86回→59回で3割減。売上が横ばいなのは単価が5,400円→7,700円に上がったから。数字は見る場所で姿が変わる
  • ✓ 売上より利益、利益より「利益÷施術時間」。今は1時間あたり約6,300円
  • ✓ 自宅開業は撤退のコストがほぼゼロ。だから数字を隠さず見られる

2022年7月19日に、自宅の一室で開業しました。理学療法士として15年、病院で働いたあとです。今年で5年目に入りました。

この記事は、その5年目の数字をそのまま出します。良い数字も、見たくなかった数字も、同じ表に載せます。

開業を考えている人が一番知りたいのは「で、実際いくら残るのか」だと思うからです。

5年目の月次の数字

直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の平均と、直近の月の実数です。管理画面の数字をそのまま写しています。

自宅サロン5年目の月次の数字。来院59回、来院人数31人、客単価7,700円、固定費8万円、売上46万円、利益率84%
  • 月の来院:59回(直近3か月の平均)
  • 月の来院人数:31人
  • 客単価:約7,700円
  • 月の売上:46万円。年にすると608万円
  • 固定費:月8万円
  • 利益率:84%

来院59回は、1日あたり2.4人です。多くありません。土曜が一番多く、平日の12時から15時と、18時以降はほとんど空いています。

それでも年の利益は500万円を超えます。理由は売上ではなく、経費の側にあります。

固定費8万円の中身

月の固定費は約8万円です。内訳を書きます。

  • 社会保険料:36,000円
  • サブスク類(AIツール、会計ソフト、画像、クラウド、サーバー):約29,000円
  • 通信費・光熱費の按分:約15,000円
  • 施術者賠償責任保険、LINE公式、消耗品、飲み物:約3,000円

家賃はありません。自宅だからです。人件費もありません。一人だからです。広告費は2026年9月で止めました。残るのは電飾看板のリース2,750円だけです。

開業当初は違いました。1年目はホットペッパーに月6.6万円、新聞折込に月4万円をかけ、経費率は40%でした。その頃の記事は別に書いています。

広告をやめた理由は、1人の新規を獲得するのにかかる費用が合わなくなったからです。やめた結果、経費率は16%まで下がり、利益率は84%になりました。

損益分岐点は、月11回

固定費8万円を客単価7,700円で割ると、約11回です。月に11回施術をすれば、その月の固定費は払えます。

59回の月なら、1週目の終わりで損益分岐点を超えます。残りの3週間は、売上のほぼ全部が利益です。

これが自宅開業の本当の強さです。腕の良さではありません。構造の話です。

店舗を借りた場合を計算してみます。家賃10万円、光熱費と共益費で3万円。固定費は21万円になります。損益分岐点は27回。同じ59回の来院でも、利益は月38万円から25万円に下がります。年にすると約160万円の差です。

開業の場所を決める時、技術より先にこの構造を決めてください。

見たくなかった数字:来院は3割減っていた

ここからが、この記事を書くきっかけになった話です。

1年前の同じ時期と比べます。

1年前と今の比較。来院86回が59回に(3割減)、来院人数38〜56人が29〜35人に、新規が月8人から月3人に、客単価が5,400円から7,700円に、売上は42〜65万円で横ばい
  • 月の来院:86回 → 59回(3割減)
  • 月の来院人数:38〜56人 → 29〜35人
  • 月の新規:8人 → 3人
  • 客単価:5,400円(2024年)→ 7,700円(4割増)
  • 月の売上:42〜65万円 → 41〜60万円(ほぼ横ばい)

売上だけを見ていると、何も変わっていないように見えます。実際、私は変わっていないと思っていました。

来院が3割減っているのに売上が保てたのは、回数券と値上げで客単価が4割上がったからです。人数の減少は、単価の上昇に隠れます。

新規が月8人から3人に減ったのは、広告をやめた結果です。経費率を下げた判断と、入口を失った結果は、同じ判断の表と裏でした。

数字は、見る場所で姿が変えます。売上を見れば順調で、人数を見れば減っている。両方が同時に本当です。

何を見れば、早く気づけたか

今は、3つの数字を毎月見ることにしています。

  1. 月の来院数
  2. 月の新規数
  3. 2回目に来てくれた率

この3つは、売上より先に動きます。来院数が減り始めてから売上が減るまでには、単価の上昇で隠れる期間があります。私の場合、それが1年でした。

2回目に来てくれた率は、年ごとに見ると60%、43%、34%と下がっていました。これも売上には出ません。

売上より利益、利益より「利益÷時間」

自宅で一人でやる商売では、売上の数字はほとんど意味を持ちません。利益率が84%なら、売上と利益はほぼ同じ動きをするからです。

見るべきは、利益を施術時間で割った数字です。

  • 月の施術時間:約60時間(来院59回、ほとんどが60分)
  • 月の利益:約42万円
  • 利益÷時間:約6,300円

この数字が上がっていれば、人数が減っていても正しい方向です。下がっていれば、安売りか空回りをしています。

60分8,000円のコースを90分12,000円に変えると、客単価は上がりますが、1時間の値段は変わりません。45分で8,000円を取れるなら、客単価は同じで1時間の値段は上がります。

一人の商売は、時間が増えません。だから「1時間の値段」が、戦う場所になります。

自宅開業の、もう一つの強さ

自宅で一人の商売は、撤退のコストがほぼゼロです。解約する店舗も、辞めてもらう人もいません。

だから、数字を隠さず見られます。来院が3割減っていた、と書けるのは、それで潰れることがないからです。

店舗を借りて人を雇っていたら、この数字は書けなかったと思います。書けないどころか、見ないようにしていたかもしれません。

開く前にできること

  1. 自分の固定費を1円単位で書き出す。家賃ゼロなら、損益分岐点が何回になるかを計算する
  2. 「月の来院数・新規数・2回目率」を記録する場所を、開業前に決める。手帳でもスプレッドシートでもいい
  3. 1時間の値段を決める。コースの時間ではなく、1時間あたりいくら受け取るか

数字は、開いてから集めるものではなく、開く前に決めておくものでした。私は5年目にやっと決めました。

開業の最初の数字(初期費用2万円、6か月で黒字、折込チラシの反応率)は、こちらに書いています。 無名の1年目が、開業後の集客をどう描くか──6か月で黒字にした実数字

広告費を年136万円から42万円に減らして何が起きたかは、次の記事に書いています。 広告費を年136万円から42万円に減らして起きたこと──新規は月8人が3人に、利益は増えた

よくある質問

Q. 利益率84%は、自宅だから可能な数字ですか?

A. はい。家賃がゼロで、人を雇わず、広告を止めているからです。店舗を借りて同じ売上なら、利益はおよそ半分になります。これは腕の差ではなく構造の差です。開業の場所を決める時は、技術より先にこの構造を決めてください。

Q. 来院が3割減っているのに、なぜ気づかなかったのですか?

A. 売上を見ていたからです。回数券と値上げで客単価が4割上がり、売上は横ばいに見えました。人数の減少は単価の上昇に隠れます。見るべきは売上ではなく、来院数・新規数・2回目に来る率の3つでした。

Q. 客単価7,700円は高いですか、安いですか?

A. 自費の整体としては普通です。60分8,000円が基本で、回数券(10回72,000円)は1回あたり7,200円。私は値段を上げるより、1時間の値段を上げる方向で考えています。60分で8,000円も、45分で8,000円も客単価は同じですが、1時間の値段は違います。